
確定申告は、もう「面倒な紙仕事」ではありません。2026年の令和7年分申告シーズン、約4人に3人がe-Tax(国税電子申告・納税システム)を選択しています。iPhoneへのマイナンバーカード機能対応、マイナポータル連携による自動入力の拡充、そして還付金が2〜3週間で届くスピード処理。「なぜこれほど便利になったのか」「セキュリティは本当に安全なのか」「まだ知らない効率化の手がかりはあるのか」──この記事では、2026年現在の税務デジタル化の全体像を、メリットだけでなく潜在的な課題まで含めて解説します。
e-Taxがスタンダードになった2026年
2026年2月16日から3月16日、令和7年分の確定申告シーズンが始まっています。かつては税務署に長蛇の列をつくっていた光景も、今やオンライン申告の普及によってずいぶん変わりました。

3人に1人から4人に3人へ──e-Tax普及の軌跡
e-Taxが登場した2004年当初、利用者はほとんどいませんでした。手続きが複雑で、ICカードリーダライタを別途購入する必要があったからです。それが2026年現在、約75%の申告者がe-Taxを利用するまでに成長しました(参照:政府広報オンライン)。
この変化を後押ししたのは、マイナンバーカードの普及とスマートフォン対応の強化です。スマホさえあれば、カードリーダライタなしで本人認証が完了するようになり、確定申告の敷居が一気に下がりました。
2026年最大のニュース──iPhoneへの完全対応
今年のe-Taxで特に注目すべき変化は、iPhoneへのマイナンバーカード機能の対応です。これまでAndroid端末では利用できていた「スマートフォンのマイナンバーカード」機能が、2025年9月以降にiPhoneでも利用可能になり、2026年の令和7年分申告から実際に活用できます(参照:起業の「わからない」を「できる」に)。
この機能を設定しておけば、申告書の作成やe-Tax送信の際に物理的なマイナンバーカードをスマホにかざす必要がなくなります。生体認証(顔認証・指紋認証)で本人確認が完了するため、作業効率が大幅に向上します。日本のスマートフォン市場でiPhoneのシェアは過半数を占めることから、この対応はe-Tax普及に大きく貢献するものと見られています。
マイナポータル連携で「申告書が自動で埋まる」
マイナポータル連携は、マイナポータルを経由して給与所得の源泉徴収票や医療費、ふるさと納税などのデータを一括取得し、確定申告書の該当項目に自動入力する機能です(参照:国税庁 e-Tax スマートフォン申告)。
2026年1月以降、この連携対象がさらに拡充され、一部の生命保険契約等の一時金・年金や損害保険契約等の満期返戻金等についても自動連携の対象となりました。すでに約310万人がこのマイナポータル連携を利用しているとされており、年々利用者が増え続けています。
どこまで便利になったのか──e-Taxの実力を深掘りする

還付金が2〜3週間で届くスピード処理
e-Taxを使う大きなメリットのひとつが、還付金の受取スピードです。e-Taxで申告した場合、還付金が振り込まれるまでの期間は申告から約2〜3週間程度です。一方、郵送や税務署窓口からの申告では約1ヵ月から1ヵ月半かかります(参照:ほまれ税理士法人)。
医療費控除やふるさと納税の還付を受けるために確定申告する方にとって、この差は無視できません。早期申告(還付申告は1月1日から受け付け開始)とe-Taxの組み合わせにより、1月に申告すれば早ければ1月中に還付金を受け取ることも可能です。
青色申告特別控除65万円を受けるための条件
個人事業主や副業で事業所得がある方にとって、e-Taxの利用は節税の観点からも重要です。青色申告特別控除の最高額65万円を適用するためには、複式簿記による帳簿作成などの要件を満たした上で、e-Taxによる電子申告が必要です。郵送や窓口持参の場合、控除額は55万円に下がります。
この10万円の差は、税率が20%の方であれば2万円の税額差を生みます。e-Taxの利用は、利便性だけでなく経済的なメリットとして考えることができます。

Chrome×マイナンバーカード方式も始まった
2026年から新たに始まったのが「Chrome×マイナンバーカード方式」です。これまでのブラウザ申告とは異なり、Google ChromeとマイナンバーカードのみでICカードリーダライタなしに申告が可能になりました(参照:国税庁 確定申告特集)。
環境構築のハードルがさらに下がり、パソコンからの申告も以前より格段にスムーズになっています。
ID・パスワード方式の新規発行停止という転換点
一方で、注目すべき変化もあります。2025年10月1日から、ID・パスワード方式の新規発行が停止されました(参照:弥生株式会社)。これからe-Taxを新規利用する方は、マイナンバーカードまたはスマホ用電子証明書の取得が前提条件となっています。
この変更は、e-Taxのセキュリティ強化とマイナンバーカードの普及促進を目的としたものですが、マイナンバーカードを持っていない方にとってはひとつのハードルとなっています。既存のID・パスワード方式ユーザーは引き続き利用できますが、この先の展開によっては廃止される可能性も否定できません。
セキュリティは本当に大丈夫なのか

国税庁が採用している多層的な保護
e-Taxのセキュリティについて不安を感じる方は少なくありません。特にマイナンバーという極めて重要な個人情報を使うことへの抵抗感は、理解できます。
国税庁が採用しているセキュリティ対策の中心は、政府共用認証局を信頼の拠点とする電子証明書の仕組みです。ネットワーク上を流れる個人情報は暗号化通信により保護されており、盗み見や改ざんを防いでいます。また、個人情報を記録するデータベースやサーバはファイアウォールとアクセス監視システムで保護されています(参照:e-Tax セキュリティ対策)。
マイナンバーカード自体にもICチップへのアクセスにはパスワードが必要で、誤ったパスワードを一定回数入力するとロックがかかる仕組みが備わっています。また、ICチップへの物理的な不正アクセスが試みられた場合、チップ自体が壊れる設計になっています(参照:ポラリファイ)。
利用者が注意すべき「フィッシング詐欺」
公的なシステム自体のセキュリティは堅固ですが、利用者側のリスクとして見逃せないのがフィッシング詐欺です。e-Taxを装ったフィッシングメールが確認されており、メール文面のリンクをクリックするとフィッシングサイトへ誘導され、個人情報やクレジットカード情報を詐取されるケースが報告されています(参照:ALSOK デジタルセールス)。
e-Taxや国税庁からのメールに記載されたリンクは、基本的にクリックしないことを原則としましょう。正規のURLは必ずブックマーク(お気に入り)から直接アクセスすることをお勧めします。本物のe-Taxサイトにアクセスした際にはブラウザのアドレスバーに「National Tax Agency」と表示されることを確認してください。
マイナポータル連携の「できることとできないこと」
マイナポータル連携は非常に便利ですが、万能ではありません。源泉徴収票の自動取得が可能なのは、勤務先がe-Tax等で源泉徴収票を税務署に提出している場合に限られます。また、各種控除証明書の自動取得は、発行主体がマイナポータル連携に対応していることが前提です。
自動入力されたデータは必ず自分で確認し、不足している情報は手動で追記する必要があります。「連携したから後は自動」と油断せず、内容の確認は怠らないようにしましょう。
2026年の税制改正と控除の変化

基礎控除・給与所得控除の引き上げ
令和7年度税制改正により、所得税の控除制度に大きな変化がありました。基礎控除額が従来の48万円から58万円を基本とし、所得に応じて最大95万円まで引き上げられます。また、給与所得控除の最低保障額も55万円から65万円へ引き上げられました(参照:確定申告・令和7年分の変更点)。
いわゆる「103万円の壁」として知られていた非課税枠も、この改正によって引き上げられています。配偶者特別控除や勤労学生控除などの所得要件も見直しが行われているため、昨年の状況とは異なる判定が求められる場合があります。
特定親族特別控除の新設
新たに設けられた「特定親族特別控除」も注目すべき制度です。給与所得者と生計を一にする19歳以上23歳未満の親族で、合計所得金額が58万円超123万円以下の方が対象となります。今年の確定申告書には「特定親族特別控除」の欄が新設されており、該当する方は記入が必要です(参照:Yahoo! くらし 確定申告総合ガイド)。
大学生のお子さんを持つ共働き世帯などに影響する制度であるため、ご自身の状況を確認してみることをお勧めします。
税務デジタル化の先にあるもの──政府が描く未来

データ連携がもたらす「申告不要社会」への道
e-Taxとマイナポータル連携の進化は、最終的に「申告不要社会」へとつながる可能性を持っています。給与所得者の年末調整は既にオンライン化が進んでいますが、将来的には個人事業主の申告においても、ほぼ全ての収支データが行政システムと自動連携し、申告内容の大半が事前に準備された状態で確認・承認するだけで済む形態が構想されています。
マイナポータル連携の対象データが年々拡大していることは、この方向性を示しています。金融機関や保険会社との連携が進めば、最終的には納税者が確認するだけで申告が完了する「プレフィルド申告」の実現も視野に入ってきます。
デジタル化の恩恵と残された課題
一方で、税務のデジタル化が急速に進む中で残る課題も指摘されておく必要があります。
まず、デジタルデバイドの問題です。高齢者やデジタル機器に不慣れな方にとって、マイナンバーカードの取得からマイナポータルの設定、そしてe-Taxでの申告という一連の手続きは依然としてハードルがあります。電子証明書の有効期限管理(マイナンバーカードの電子証明書は発行から5回目の誕生日で失効)も見落としがちなポイントです(参照:@nifty IT小ネタ帳)。
次に、データ集中のリスクです。マイナポータルに収入・医療・保険などの個人情報が集約されるようになるほど、万一のサイバー攻撃や不正アクセスの際の被害規模が拡大するリスクも高まります。システムのセキュリティ強化と並行して、利用者自身がアカウント管理に細心の注意を払うことが求められます。
今からできる「賢い使い方」
現在の確定申告期間(2026年2月16日〜3月16日)において、e-Taxをより賢く使うためのポイントをまとめると、次のようになります。
マイナポータル連携の事前設定は時間がかかる場合があります。初めて設定する方は余裕をもった準備が必要です。また、電子証明書の有効期限は、マイナンバーカードの有効期限(10年、未成年は5年)とは別に管理されている点に注意が必要です。引っ越し後に役所での更新手続きを行っていない場合、電子証明書が失効しているケースがあります。
公金受取口座を事前に登録しておくと、還付金の受取口座情報の入力が不要になります。この登録もマイナポータルから行うことができます。
まとめ──「面倒な申告」から「スマートな申告」へ
2026年の確定申告は、e-Taxとマイナンバーの融合が加速した年として記録されるでしょう。iPhoneへの完全対応、マイナポータル連携の拡充、Chrome方式の追加──これらは「使えれば便利」というレベルを超え、「使わないと損」という状況を生み出しつつあります。
税務のデジタル化は、私たちの税との関わり方そのものを変えようとしています。便利さの恩恵を最大限に受けながら、セキュリティへの意識と正確な情報確認を怠らない姿勢が、これからの賢い納税者に求められる資質と言えるかもしれません。
参照先
- 政府広報オンライン「令和7年分の確定申告はe-Taxを」
- 国税庁 スマホとマイナンバーカードでe-Tax!令和7年分確定申告特集
- 国税庁 確定申告特集トップ
- e-Tax セキュリティ対策について
- 起業の「わからない」を「できる」に「2026年最新e-Taxの使い方」
- 弥生株式会社「マイナンバーカードなしで確定申告はできる?」
- Yahoo! くらし「2026年版確定申告総合ガイド」
- Square「確定申告 変更点解説」
- ほまれ税理士法人「確定申告のやり方完全ガイド」
- @nifty IT小ネタ帳「2026年確定申告期間はいつからいつまで?」
- ポラリファイ「マイナンバーカードの不正利用・情報漏洩のリスク」
- ALSOK デジタルセールス「e-Taxを安全に利用するためのフィッシング対策」


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